第18話「音楽制作への第一歩:不思議な出会いと新たな挑戦」

陽菜の部屋に、期待と緊張が入り混じった空気が漂っている。美樹が持ってきたノートパソコンの画面には、複雑そうなソフトウェアが表示されている。

「さぁひなちゃん、いよいよ実際に音を使ってもう少し詳しく音楽制作の世界に進んでいくわよ!」 美樹が笑顔で言う。

「やったー、楽しみ!」 陽菜は目を輝かせて返事をする。

美樹は少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。 「…と言いたいところなんだけど、私はちょっと作曲依頼が立て込んでいるから作業に戻るわね」

「え?」陽菜の表情が少し曇る。

「でも大丈夫!ひなちゃんにはおすすめのサイトを教えてあげる!」 美樹は慌てて付け加える。

「私が使っているDAW、Abletonに作曲入門のサイトがあるの。実際に音も出るしとてもわかりやすいわ」

美樹はパソコンを操作し、ブラウザを開く。 「このサイトよ。https://learningmusic.ableton.com/

「へぇ、すごそう…」陽菜は少し不安そうに画面を覗き込む。

「アイドルソングではなく、ダンスミュージック系ではあるけど作曲の考え方としては同じ。むしろダンスミュージックの作り方も知っておいた方がアイドルソングを作るのには役に立つから、きちんと学んでおいてね!」

「うん、わかった!やってみる!」 陽菜は少し自信なさげながらも、やる気を見せる。

美樹は何かを思い出したように言う。 「あ、あともし作曲についてわからないことや知りたいことが出た場合に助けてくれる人のメールアドレスも一緒に教えておくわ!いつでも連絡していいって言ってるから気軽に送っていいからね!」

「えっ、ありがとう…でも誰なのその人?」 陽菜は不思議そうな顔をする。

美樹は少し困ったように笑う。 「んーとね、『中の人』って言えば早いかな?」

「え、中の人!?中野さん!?」 陽菜は驚いた表情で叫ぶ。

「違う違う、だれ中野さんって!笑」 美樹は大笑いする。

「ま、私のことをよく知っているプロの人よ、色々アドバイスをもらえるはずだから!ということで中の人!メール届いたら宜しくね!」

美樹が突然、部屋の空気に向かって話しかける。

「また誰かに話してる!?誰かに見られてるの!?」 陽菜は混乱した様子で部屋を見回す。

美樹はくすくすと笑いながら、メモ用紙にメールアドレスを書き始める。 「ふふふ。じゃ、がんばってねー!!」

美樹がメモを渡すと、そこには「itonoki3@gmail.com」と書かれている。

「ちょっと待って、お姉ちゃん!」 陽菜が慌てて美樹を呼び止める。

「何?ひなちゃん」

「本当に大丈夫?私、一人で音楽作れるかな…」 陽菜の声には不安が滲んでいる。

美樹は優しく微笑んで、陽菜の肩に手を置く。 「大丈夫よ。ひなちゃんならきっとできる。それに、困ったときはいつでも私がいるし、『中の人』にも相談できるでしょ?」

「うん…でも、その『中の人』って…」

美樹は陽菜の言葉を遮るように続ける。 「ひなちゃん、音楽って不思議なものよ。時には思いがけない出会いや、不思議な導きがあったりするの。その全てが、あなたの音楽を作り上げていく糧になるの」

陽菜は少し考え込む。 「そっか…じゃあ、この『中の人』も私の音楽への導きなのかな」

「そう考えるといいわね。さぁ、新しい冒険の始まりよ!」

美樹が部屋を出ていった後、陽菜はパソコンの前に座る。画面に表示された作曲入門サイトを見つめながら、深呼吸をする。

「よし、やってみよう」

陽菜がマウスをクリックすると、不思議な音が部屋に響き渡る。その瞬間、陽菜の目が輝きを増す。音楽制作の世界への第一歩。そして、謎の「中の人」との不思議な縁。陽菜の新たな音楽の冒険が、今始まろうとしていた。

部屋の片隅では、美樹が置いていったメモが微かに揺れている。そこには「中の人」のメールアドレスと共に、小さな文字で「音楽は、あなたの中にある」と書かれていた。陽菜の目には入らないその言葉が、これからの彼女の音楽の旅路を暗示しているかのようだった。

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