第14話「リズムの心臓:ドラムの秘密を探る」

陽菜の部屋に、軽快なリズムが流れている。パソコンから、様々なドラムの音が次々と響く。

「ねえ、お姉ちゃん。この音、全部ドラムなの?」 陽菜は不思議そうな顔で尋ねる。

美樹はにっこりと笑う。「そうよ。今日はドラムについて話そうと思って。アイドルソングには欠かせない楽器だからね」

「へぇ、でもどれも違う音がするね」 陽菜は首をかしげる。

「鋭いわね。実はドラムには大きく分けて2種類あるの。アコースティックドラムと電子ドラム」

「アコースティック?」 陽菜は聞き慣れない言葉に戸惑う。

「そう、生の楽器のことよ。実際に叩いて音を出す本物のドラムセットのこと。一方、電子ドラムは実際のドラムの音をサンプリングしたり、デジタルで作られた音を使うの」

「サンプリング?それってなに?」 陽菜は興味深そうに尋ねる。

美樹は説明を加える。「サンプリングっていうのは、実際の楽器の音を録音して、それをデジタルデータとして保存すること。そのデータを使って、コンピューター上で音を再現するの」

「へぇ、本物の音を使うんだ!」

「そうよ。だから、電子ドラムでも本物のドラムに近い音が出せるの。でも、完全に同じではないわ。独特の音色があるのよ」

美樹はパソコンを操作し、2つの音源を交互に再生する。

「聴いてみて。これがアコースティックドラム」

力強く、生々しい音が響く。

「で、こっちが電子ドラム。有名なのはRoland TR-909やTR-808というドラムマシンの音ね。これらは、サンプリングとデジタル音源を組み合わせて作られているの」

クリアで特徴的な音が流れる。

「わぁ、全然違う!」 陽菜は目を丸くする。

「そうでしょ?アコースティックドラムは生の楽器だから、叩く強さや場所で音が微妙に変わるの。それが生々しさや迫力につながるわ」

「なるほど…」

「一方、電子ドラムは音が安定していて、様々な音色を簡単に切り替えられるのが特徴ね。特に909や808の音は、多くのダンスミュージックで使われているわ」

陽菜は熱心に聞き入っている。

「じゃあ、アイドルソングではどっちがいいの?」

美樹は少し考え込む。「それがね、場合によるのよ。曲調や求める雰囲気で使い分けるの」

「え?どういうこと?」

「例えば、元気で弾けるような曲なら、アコースティックドラムの生々しさや迫力が活きるわ。特にライブ感を出したい時にはピッタリ」

美樹はパソコンを操作し、元気な曲を流す。

「聴いて。このドラムの音、生き生きしてるでしょ?」

陽菜は頷きながら、体を揺らし始める。「うん!なんだかテンション上がってくる!」

「そうそう。逆に、クリーンでポップな曲や、エレクトロニックな要素が強い曲では電子ドラムが合うことが多いわ」

今度はポップな曲を流す。

「このドラムの音、すごくすっきりしてるね」 陽菜は感心した様子。

「そう。電子ドラムは音をコントロールしやすいから、他の楽器とも馴染みやすいの」

「へぇ〜、奥が深いんだね」

美樹は少し懐かしそうな表情を浮かべる。「私も最初は戸惑ったけど、いろいろ試してみるうちに、だんだん自分の好みがわかってきたわ」

「お姉ちゃんは、どっちが好きなの?」

「うーん、私はアコースティックドラムの生々しさが好きかな。でも、曲によって使い分けるわ。大切なのは、曲の雰囲気にあったドラムを選ぶこと」

陽菜は真剣な表情で聞いている。

「ねえ、アコースティックドラムってどんな形なの?」

「アコースティックドラムは、よくバンドで見る誰もが思い浮かぶあの『ドラム』の姿をしているわ。大きなドラムセットで、実際に叩いて音を出すの」

「あ、テレビで見たことある!」陽菜は目を輝かせる。

「そうそう。一方、電子ドラムはEDMやテクノなどダンスミュージックに主に使われるわ。コンピューターで再生される音だから、様々な音色を簡単に使えるの」

「へぇ、用途が違うんだね」

美樹は頷く。「そうなの。でも、アイドルソングは勢い系も踊る系も様々な曲調が存在するのよ」

「本当だ!確かに色んなタイプの曲があるよね」

「だからこそ、どちらの音も使いこなせるようになるのが理想ね。アイドルソングの幅広さに対応できるようになるの」

陽菜は熱心に聞き入っている。

「ねえ、実際にドラムを演奏できなくても大丈夫?」 少し不安そうな声で陽菜が尋ねる。

美樹は優しく微笑む。「大丈夫よ。DTMでは、MIDIでドラムを打ち込むの。キーボードやマウスで入力できるから、実際の演奏スキルがなくても曲は作れるわ」

「へぇ、それは安心だね」

「でも、基本的なリズムの知識は必要よ。4分音符、8分音符、16分音符とか…」

陽菜は少し困惑した表情を見せる。

美樹は笑いながら言う。「あ、ごめんね。難しい話になっちゃった。これはまた今度ゆっくり説明するわ」

「うん、楽しみ!」

美樹はパソコンを操作し、別の曲を流す。

「さて、この曲のドラムは何だと思う?アコースティック?電子?」

陽菜は真剣に耳を傾ける。「うーん…アコースティック?」

美樹は嬉しそうに頷く。「正解!よく聴き取れたわね」

「えへへ、なんとなくわかってきた気がする」 陽菜は得意げな表情を見せる。

「素晴らしいわ。音楽制作の世界は奥が深いけど、こうやって少しずつ理解していけばいいの」

陽菜は決意に満ちた表情で言う。「うん!もっと色んなドラムの音を聴いてみたい。いつか自分で曲を作るときに、ぴったりのドラムを選べるようになりたいな」

美樹は優しく陽菜の頭を撫でる。「その意気よ。これからアイドルソングを聴くときは、どんなドラムの音を使っているかも注目して聴いてみようね!」

「うん!楽しみになってきた!」

部屋には、様々なドラムの音が響き続けている。姉妹の目には、音楽への情熱と好奇心が輝いていた。ドラムという楽器を通じて、音楽制作の奥深さと楽しさを垣間見た二人。これからどんな音楽が生まれるのか、その期待に胸を膨らませながら、姉妹は次なる音楽の冒険へと歩みを進めていく。

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