夕暮れの柔らかな光が部屋に差し込む中、美樹と陽菜は床に座り込んでくつろいでいた。机の上には、これまでのメモや楽譜が広がっている。
「ねえ、お姉ちゃん」 陽菜が静かに話しかける。
「ん?どうしたの、ひなちゃん?」 美樹は優しく応える。
「この前から色々教えてもらって、すごく勉強になったよ。でも…」 陽菜は少し言葉を詰まらせる。
「でも?」
「なんだか、すごく大変そうで…私にできるかな」 陽菜の声には、不安が滲んでいた。
美樹は微笑んで、陽菜の肩に手を置く。
「そうね、確かに簡単な道じゃないわ。でも、ひなちゃんならきっとできるわ」
「本当に?」
「うん。だって、ここまで真剣に聞いて、メモまで取ってたじゃない」 美樹は机の上のノートを指さす。
陽菜は少し赤面する。 「えへへ、バレてた?」
「もちろん。私の大切な妹のことだもの」 美樹はくすっと笑う。
「ねえ、ひなちゃん。これまでの話を聞いて、どんなことが印象に残った?」
陽菜は少し考え込む。 「うーん…『質より量』ってこと。あと、完璧を求めすぎないことかな」
「そう、その通りよ。他には?」
「あ、『世界観』を大切にすることも!」 陽菜の目が輝く。
「よく覚えてるわね。じゃあ、これからどんなことをしていきたい?」
陽菜は真剣な表情になる。 「まずは、とにかく曲を作ってみること。下手でもいいから、最後まで形にする」
美樹は嬉しそうに頷く。 「そうね。それが一番大切よ」
「でも…」 陽菜の表情が曇る。
「どうしたの?」
「私、アイドルになりたいって思ってたけど、作曲家になりたいのかな…」 陽菜は少し混乱した様子。
美樹は優しく微笑む。 「ひなちゃん、それは矛盾してないわ。自分で曲を作れるアイドル、素敵じゃない?」
陽菜の目が大きく開く。 「そっか!そういう道もあるんだ!」
「そうよ。自分の個性を生かした道を見つけていけばいいの」
陽菜は元気を取り戻したように見える。 「よし!じゃあ、まずは曲作りの練習から始めよう」
「その意気よ。でも、焦らなくていいからね」 美樹は優しく諭す。
「うん、わかった。でも、のんびりやるほど命は長くないんでしょ?」 陽菜はニヤリと笑う。
美樹も笑い返す。 「そうそう。でも、楽しみながらね」
「お姉ちゃん、これからも教えてね」 陽菜は真剣な眼差しで美樹を見つめる。
「もちろん。でも、最終的には自分で道を切り開いていくのよ」
陽菜は大きく頷く。 「うん!頑張る!」
窓の外では、夕日が沈みかけていた。姉妹の前には、まだ見ぬ音楽の世界が広がっている。それは険しくも、輝かしい道のりだ。
美樹は立ち上がり、伸びをする。 「さあ、今日はここまでにしましょう。明日からまた新しい挑戦が始まるわ」
「うん!楽しみ!」 陽菜も立ち上がり、伸びをする。
部屋には、新しい決意と希望が満ちていた。音楽への道は始まったばかり。でも、二人ならきっと乗り越えられる。そんな確信が、姉妹の心を温かく包んでいた。