陽菜の部屋に、夕日が差し込む。新しく設置されたモニタースピーカーが、夕陽に照らされて輝いている。
「ねえ、お姉ちゃん」 「ん?どうしたの、ひなちゃん?」 「音楽ってどうやって作るの?全体の流れが知りたいな」
美樹はにっこり笑う。「いい質問ね。じゃあ、音楽制作の全体像を説明してあげるわ」
美樹は椅子に座り、陽菜も隣に座る。
「まずはどうやって音楽が作られるのか、全体像を知っておこうね」
美樹が説明を始める。
「1、作曲。これは当然ね!自分で納得いく音楽を形にするの」 「うん!楽しみ!」 「2、作詞。作詞もしなきゃね。ここはまた今度詳しく説明するから楽しみにしておいて!」 「はーい!」 「3、録音。実際に歌を録音するのよ。これもとても難しい技術が必要。でも歌をいれると一気に完成形に近づくから感動まちがいなしだよ」
陽菜は少し緊張した表情になる。「難しそう…」
「4、歌の整音。整音というのは音を整えるってこと」 「へぇ〜」 「録音した歌は厳密には音程やタイミングがずれているの。それを専用のプラグインを使って補正していくわ」
美樹は続ける。
「アイドル曲の場合は複数人重ねた時の聞こえ方を調整したり、不要なノイズが紛れ込んでいたらカットしたり。手間暇かかるけど、作品としてのクオリティをアップさせる大事な工程よ」
陽菜は真剣な表情で聞いている。
「5、ミックスダウン。よくミックスともいわれるわね。後ろの音楽と歌の音量や音質のバランスを整える工程よ」 「難しそう…」 「そうね、ここでは繊細な音も聞き分けるからちょっと難易度上がるかも。料理で例えるなら、ドラムやギターや歌、ピアノといった『素材』をいい感じに配置する盛り付けみたいなものかな。バランスが崩れると一気においしそうではなくなってしまう。そんなイメージ」
陽菜は少し不安そうな顔をする。
「最後に6、マスタリング。音楽の最終調整って感じの工程ね。市販されているCDや音源と同じ音量の聞こえ方にしたり音質を整えたりするの」 「う、うん…すごく複雑そう」
美樹は笑いながら続ける。
「また料理で例えると、他のお店の料理と並べても同じようにおいしく見えるような料理の大きさ、色合いなどを調整するイメージかな」
「大きくはこの工程を経て、音楽は仕上がるのよ。昔は録音専門、ミックス専門、マスタリング専門の職人がいて、大手だとそれぞれが分担して活躍していたの。でも今はパソコンで一人でできちゃうから、すごい時代よね」
陽菜は不安そうな顔をする。「でも、難しそう…私にできるかな」
美樹は陽菜の頭をなでる。
「大丈夫よ。確かに専門的な知識や機材、テクニックが必要だから、そう簡単にプロの音にはならないわ。きっとひなちゃんも壁にぶつかると思うから覚悟していてね!」 「でも難しいからこそ、達成感があるしおもしろいのよ。極めればミックス師といってSNSで依頼を受けてお金にもできるくらい立派な技術なんだから!」
陽菜の目が少し輝き始める。「へぇ、そうなんだ」
「そうよ。それで機材を買う。そしてまたスキルアップ。そしてまた稼いで買う。この繰り返しも作曲上達の一つなんだよ」 「なんだか、少しずつ頑張ればいいって感じがしてきた」
美樹はにっこり笑う。「そうよ。一歩ずつ進んでいけばいいの。さあ、これからどんな音楽が生まれるか楽しみね」
陽菜は大きくうなずく。「うん!頑張る!」
夕日が沈み、部屋が薄暗くなってきた。しかし、陽菜の目には新しい音楽への希望の光が宿っていた。これから始まる音楽制作の旅。その第一歩を、陽菜は確かな足取りで踏み出そうとしていた。
今回のおさらい
音楽制作の基本工程:
- 作曲:音楽の基礎となるメロディやハーモニーを作る
- 作詞:曲に合わせた歌詞を書く
- 録音:実際に歌や楽器の音を録音する
- 整音:録音した音を補正し、不要なノイズを取り除く
- ミックスダウン:各パートの音量や音質のバランスを調整する
- マスタリング:全体の音質を整え、最終調整を行う
覚えておこう!
- 各工程には専門的な知識とスキルが必要
- 現代では一人でも全工程を行うことが可能
- 難しさがある分、達成感も大きい
- 継続的な学習と実践が上達の鍵