陽菜の部屋には、新しい機材が増えていった。パソコンの画面には、複雑そうなソフトウェアが表示されている。
「ねえ、お姉ちゃん」 「ん?どうしたの、ひなちゃん?」 「この画面に出てくる『プラグイン』って何?難しそう…」
陽菜は少し緊張した表情で画面を指さす。美樹は優しく微笑む。
「そうね、最初は難しく見えるかもしれないわ。でも、案外身近なものなのよ」 「え?本当?」 「うん。プラグインというのは簡単にいえば『拡張機能』なの」 「拡張機能?」
美樹は説明を続ける。
「ひなちゃんもスマホのカメラアプリよく使うでしょ?普通に撮影したものにおしゃれな雰囲気にしたり、レトロな雰囲気にしたりするでしょ?」 「うん、よく使うよ!」 「自動で目を大きくしたり変なかぶりものをかぶらせたり。言ってみればああいうのも拡張機能なの」 「へぇ〜」 「標準機能にもっと機能を付け加える。それがプラグインみたいなイメージかな」
陽菜の目が輝き始める。「わかりやすい!すごくイメージできた!」
美樹はニヤリと笑う。「そうそう。ちなみに、学校だけでは足りないから塾に行くことも『拡張機能』プラグインなのかもね。成績悪いひなくん」
「わ、わかりやすい〜〜」陽菜はタジタジになりながらも、少し笑顔になる。
美樹は続ける。「さて、プラグインにはまず大きく2つの種類があるの」 「2つ?」 「そう。1つはエフェクト。これは音を削ったりカラオケのエコーみたいに響かせたり、音を加工するもの」 「あ!カラオケのエコー、知ってる!」 「そうそう。スマホアプリの加工もこれに近いわね。元々あるものに対して何か手を加える。それがエフェクトプラグイン。一般的にはエフェクトだけで呼ぶわ」
陽菜は熱心に聞いている。
「次が音源のプラグイン。例えばピアノ、ギター、ドラム、バイオリンなど、楽器の音を再現する追加ソフトのようなものね」 「え?パソコンで楽器の音が出せるの?」 「そうよ。実物は無い架空の楽器だから、バーチャルインストゥルメントとも言うわ」 「すごい!」
美樹は続ける。「DAWにも最初から入っているけど、ちょっとしょぼかったり、物足りないから追加したいって時がある。その時にこうした音源のプラグインを追加するってこと」
「へぇ〜。でも、そういうの高そう…」陽菜が少し心配そうな顔をする。
「そうね、確かに高いものもあるわ。でもね、このプラグインは無料もあれば有料もあるの。比較的セールも行って値段が大幅に安くなったりするから、また今度紹介するね」
「わぁ、楽しみ!」
美樹はパソコンの画面を操作し始める。「じゃあ、実際にいくつか聴いてみる?」 「うん!」
美樹がクリックすると、ピアノの音が流れ出す。
「これが標準のピアノ音源ね」 「へぇ〜、結構いい音」 「でも、こっちを聴いてみて」
美樹が別のプラグインを選択すると、より豊かで響きのあるピアノの音が流れ出す。
「わぁ!全然違う!」陽菜は驚いた表情を見せる。 「そうでしょ?これがプラグインの力よ」
次に、美樹はギターの音を鳴らす。
「これが標準のギター音源」 「うん、ギターっぽい」 「じゃあ、こっちは?」
エフェクトをかけたギターの音が響く。
「わぁ!かっこいい!」 「これはディストーションっていうエフェクトをかけたの。ロックなどでよく使われるわ」
陽菜は目を輝かせている。「すごい!音がこんなに変わるんだね」
美樹は嬉しそうに続ける。「そうなの。プラグインを使いこなせれば、本当に色々な音楽が作れるようになるわ」
「でも…難しそう」陽菜が少し不安そうな顔をする。
「大丈夫よ。最初は基本的なものから始めて、少しずつ覚えていけばいいの。私も最初は戸惑ったけど、使っているうちに慣れてきたわ」
陽菜はほっとした表情を見せる。「そっか。じゃあ、私も頑張ってみる!」
「その意気よ!」美樹が陽菜の頭をなでる。「それじゃあ、次は実際に簡単なエフェクトを使ってみようか」
「うん!楽しみ!」
陽菜と美樹は、画面に向かって座り直す。プラグインという新しい魔法の杖を手に入れた陽菜。これから始まる音楽制作の冒険に、胸を躍らせていた。
夜が更けていく中、姉妹の楽しそうな声と、様々な音が部屋から漏れ出していた。音楽の世界は、陽菜にとってますます魅力的なものになっていくのだった。
今回のおさらい
プラグインの基本:
- プラグインとは:
- 音楽ソフトの機能を拡張するもの
- スマホアプリの加工機能に似ている
- プラグインの2種類:
- エフェクトプラグイン:音を加工する(例:エコー、ディストーション)
- 音源プラグイン:楽器の音を再現する(バーチャルインストゥルメント)
- プラグインの特徴:
- 無料のものと有料のものがある
- セールで安く購入できることもある
- 使いこなすことで音楽の幅が広がる
覚えておこう!
- プラグインは音楽制作の可能性を大きく広げる
- 基本的なものから少しずつ学んでいくのがコツ
- 実際に使って音の違いを聴き比べることが大切