陽菜の部屋に、また新しい機材が届いた。今回は、小さめのスピーカーだ。
「ひなちゃん、これが音楽制作には欠かせないモニタースピーカーよ」美樹が説明を始める。
陽菜は首をかしげる。「モニター?テレビみたいなやつ?」
美樹は笑いながら「違うわよ。これは音楽制作専用のスピーカーなの。普通のスピーカーとは違うのよ」
「へぇ、どう違うの?」
「音楽をより正確に再現できるように作られているの。曲作りには、音の細かいニュアンスまで聴こえることが大切だからね」
陽菜は興味深そうに聞いている。「ふーん、すごいね!でも、なんで『モニター』っていうの?」
美樹は少し考えてから答える。「それはね、音楽を『監視』するような感覚で使うからよ。自分が作った音をしっかり『モニター』する…つまり、確認するの」
「なるほど!」陽菜は目を輝かせる。「じゃあ、大きいのがいいんじゃない?」
美樹はにっこり笑う。「そうね、本当は大きいのがいいんだけど、やっぱり爆音が出るから近所迷惑になるでしょ?」
「あ、そっか!」
「それに、ちょっとボリュームを上げれば大音量になるから、スピーカー自体の本気が出せないのよ」
陽菜は少し混乱した顔をする。「本気が出せない?」
美樹は考え込んでから、「そうねぇ…例えば、ひなちゃんの足が爆速だったらどう?」
「え?」
「ちょっと走り出したら新幹線みたいなスピードが出る体だったら。全力出す前に壁にぶつかってしまうでしょ?笑」
陽菜は吹き出す。「なにその例え!」
美樹も笑いながら続ける。「それは本気になれないってことと同じ。いいスピーカーだったとしても良さを十分に発揮できないってわけ」
「へぇ〜。なんとなくイメージできたかも」陽菜がうなずく。「だから小さいのからスタートってことね」
「そうそう、その通り!」
美樹は別の箱を取り出す。「あと、これも大切よ」
「これは…ヘッドホン?」
「そう。これも音楽制作専用のものなの。夜に作曲するときに使えるわ」
陽菜の目が輝く。「わぁ、夜中に作曲できるんだ!」
美樹は優しく微笑む。「そうね。でも、睡眠時間は大切にしてね」
「もちろん!」陽菜は嬉しそうに頷く。「ねえ、早速つないでみていい?」
「いいわよ。じゃあ、接続方法を教えるね」
美樹がモニタースピーカーとヘッドホンの接続を始める。陽菜は熱心に見ている。
「ねえ、お姉ちゃん。このスピーカーとヘッドホン、どっちが音いいの?」
美樹は少し考えてから答える。「どちらも大切よ。スピーカーは部屋の音響も含めた全体的な音を聴くのに適しているわ。一方、ヘッドホンは細かい音の確認に向いているの」
「へぇ、使い分けるんだね」
「そうよ。プロの人は両方使って確認するのよ」
陽菜は感心した様子で聞いている。「すごいなぁ。私もそんな風に聴けるようになりたい!」
美樹は優しく頭をなでる。「大丈夫よ。少しずつ練習していけば、必ず聴こえるようになるわ」
接続が終わり、美樹がスイッチを入れる。優しい音楽が流れ始める。
「わぁ…」陽菜は目を閉じて聴き入る。「なんだか、今まで聴いてた音楽と違う気がする」
美樹はにっこり笑う。「そうでしょ?これが『正確な音』っていうものよ」
陽菜は目を輝かせる。「すごい!早く曲作りたくなってきた!」
「その意気よ!でも、まずは色んな曲をこのスピーカーで聴いてみるのがいいわね。音の違いを感じ取ることから始めましょう」
陽菜は大きくうなずく。「うん!頑張る!」
新しい機材が加わった陽菜の部屋。それは単なる勉強部屋から、小さな音楽スタジオへの第一歩だった。壁に貼られたアイドルのポスターが、まるで陽菜の新たな挑戦を応援しているかのように輝いて見えた。
今回のおさらい
モニタースピーカーとヘッドホンの基本:
- モニタースピーカーとは:
- 音楽制作専用のスピーカー
- 通常のスピーカーより正確な音の再現が可能
- モニタースピーカーの選び方:
- 初心者は小さいサイズから始めるのがおすすめ
- 大きすぎると音量調整が難しく、性能を十分に生かせない
- ヘッドホン:
- 音楽制作専用のものを使用するのが望ましい
- 夜間の作業や細かい音の確認に適している
覚えておこう!
- モニタースピーカーは音楽制作に欠かせない機材
- 環境に合わせたサイズ選びが重要
- ヘッドホンも併用すると作業の幅が広がる