陽菜の部屋には、新しく設置された機材が並んでいる。
そこに、美樹が新たな箱を持って入ってきた。
「ひなちゃん、今日はマイクの話よ!」
「わぁい!早速歌いたい!」
美樹は笑いながら、「その前に、ちょっと勉強しましょ」
箱から2本のマイクを取り出す美樹。
陽菜は目を輝かせる。
「ねえねえ、これって…ライブで見たことある!」
「さすが!これはダイナミックマイク。SHURE SM58っていう超有名なやつ」
陽菜は興奮気味に言う。
「カラオケでも見たことある!」
「そうそう。ライブハウスでもよく使われるの」
美樹は別のマイクを手に取る。
「こっちはコンデンサーマイク。AKG C214っていうの」
「へぇ…なんか違いがあるの?」
美樹はにっこり笑う。
「大きく分けて、マイクにはダイナミックとコンデンサーの2種類があるの」
「え?何が違うの?」
「うーんと…そうね。ダイナミックマイクは頑丈で、多少落としても大丈夫。だからライブでよく使われるの」
陽菜は驚いた顔で「へぇ!すごい!」
「でも、コンデンサーマイクは繊細なの。優しく扱わないと壊れちゃうかも」
「怖いね…」
「大丈夫、慣れれば問題ないわ。それに、音質が全然違うの」
陽菜は首をかしげる。
「音質?」
「そう。コンデンサーマイクは音をクリアに拾うの。繊細な表現も逃さない」
「へぇ…」
「一方、ダイナミックマイクは…そうね、乱暴に言っちゃえばちょっと音がこもる感じかな。でも、それがライブ感を出すのよ」
陽菜は真剣な顔で聞いている。
「じゃあ、どっちがいいの?」
「歌を録音するなら、コンデンサーマイクがおすすめ。クリアに録音していた方が加工もしやすいからね。逆にこもっていたり音の状態が悪いと修正しにくいの。でも、コンデンサーマイクはちょっとお高いのよね」
陽菜は少し落胆する。
「でも大丈夫!初心者のうちはダイナミックマイクでも全然OK!」
美樹は優しく笑う。
「それに、このマイク、私の使ってないやつだからひなちゃんにあげる!」
「えっ!?本当に!?」
「うん!でも、コンデンサーマイクを使うときは気をつけてね」
陽菜は喜びのあまり飛び上がりそうになる。
「あ、そうだ!大事なこと忘れてた」
美樹が真面目な顔をする。
「コンデンサーマイクを使うときは、ファンタム電源が必要なの」
「ファンタム…?幽霊?」
美樹は笑い出す。
「違うわよ。マイクに電気を送る特別な電源のこと。オーディオインターフェースについてるボタンで操作するの」
「へぇ…難しそう」
「大丈夫、慣れれば簡単よ。ダイナミックマイクは必要ないから、最初はそっちから始めてみるのもいいかも」
陽菜はうなずく。
「わかった!でも、早く両方使ってみたい!」
「その意気よ!じゃあ、実際に使ってみましょうか」
美樹がマイクをセッティングし始める。
「ねえ、お姉ちゃん。私も歌うとき、マイク落としちゃったりしないかな…」
美樹は優しく微笑む。
「大丈夫よ。最初は誰でも緊張するものさ。それに、ダイナミックマイクなら多少のことは平気だから」
陽菜は安心したような、それでも少し不安そうな表情。
「よし、準備OK!歌ってみる?」
陽菜は深呼吸をして、マイクを手に取る。
「せーの…」
陽菜の歌声が部屋に響き始める。
美樹は目を閉じて聴き入る。
歌い終わると、陽菜は少し照れくさそうに「どうだった?」と聞く。
美樹は満面の笑みで「素晴らしいわ!これからが楽しみね」と答える。
陽菜の目が輝く。
マイクという新しい友達ができた今日、彼女の音楽への一歩が、また一つ前に進んだ。
今回のおさらい
マイクの基本:
- ダイナミックマイク
- 頑丈で落としても大丈夫
- ライブやカラオケでよく使用
- 音質はややこもり気味だがライブ感がある
- 例:SHURE SM58
- コンデンサーマイク
- 繊細で扱いに注意が必要
- クリアな音質で細かい表現も拾える
- 録音に適している
- ファンタム電源が必要
- 例:AKG C214
覚えておこう!
- 初心者はダイナミックマイクから始めるのがおすすめ
- コンデンサーマイクを使うときはファンタム電源を忘れずに!
- マイクは大切に扱おう。特にコンデンサーマイクは慎重に!